小児科
小児科
小児科は子どもの多様な疾患に対応する総合診療科です。
小さなお子さまの病気は、症状の訴えが上手くできなくて、周囲に気付かれにくいという特徴があります。また、朝は元気だったのに半日でぐったりする、など進行が急であることも多いです。
感染症にかかりながら免疫を得て成長していく時期でもあるため、一生で最も感染症にかかることが多い時期ともいえます。子どもの病気は大人とは様々な点で異なるため、日ごろの状態と比較し、よく観察しておくことが大切です。
「いつもと違う」という、いわゆる「親の直感」も重要です。
同様に、かかりつけの病院でいつも診てもらうことも、症状の違いに早く気付いてもらえることに繋がります。
お子さまが熱を出すということは、看病されるご両親にとって大変心配なことです。
ただ、環境温度によって体温が変動しやすいことも、逆に、高熱でもケロッと遊べたりすることもあります。
① 肌着など薄着にしてみる
② 頭や首の後ろ、わきの下、鼠蹊部などを氷まくらで冷やしてみる
③ ミルクや水分補給をさせる
などして、少し時間を置いてから再度検温しなおしてみましょう。
うつ熱など、病気ではない時には数時間で下がっていることもあります。
発熱は感染症から体を守ろうとする防御反応となります。
また、熱の高さと病気の重症度は比例するものではありません。
高熱でも元気にすごせていれば定期的に熱さましを飲ませる必要はなく、coolingや有効な水分補給、栄養と休養をしっかりとらせることの方が重要です。
しかし、微熱でも、長く続く中で感染症以外の疾患がかくれている場合もあります。
特に、6ヶ月未満のお子さまは進行が急なことも多く、こまめな診察を心がけましょう。
嘔吐の原因…胃腸炎、ストレス時の脱水(感染症、遠足・運動会・遠出など疲労後)など
運動会後、疲れて帰ってきてそのまま寝てしまったら、夜中や朝から吐き始めて止まらなくなった…などの症状は、周期性嘔吐という予備力の少ない小児ならではの症状です。
※嘔吐や下痢など⇨脱水⇨気持ち悪く感じる代謝になる⇨吐き気で嘔吐を繰り返し⇨また脱水。 と、負の連鎖ループが止まらなくなるため。
胆汁が混じる際は外科疾患を含めた消化管の通過障害の可能性
髄膜炎など脳圧が上がっている可能性
急性腹症・高度脱水などの可能性
嘔吐後少し少しすっきりしたころ30分後くらいから、最低でも3〜4時間以内に「有効な」水分補給を開始することが推奨されます。
ただし、普段ミルクでほぼ栄養補給をしているような0歳の乳児のお子さまは少量ずつ。頻回授乳の方法で、薄めない普通のミルクでいただいて大丈夫です。
血管内の水分は薄まって脱水はどんどん進んでしまいます。
WHOなど欧米の国際基準;Na濃度50-90mEq /Lの経口補水液が推奨。
✖️赤ちゃん用〜大人のイオン水;Na9〜23mEq程度
✖️水やジュース;ほぼ0mEq
腸蠕動が激しいと嘔吐を繰り返します。
ORSを嘔吐してしまっても効果はあるので続けて投与して大丈夫ですが、最初はお子さまが欲しがっても決して一気飲みさせず、少量ずつ頻繁に飲ませることがポイントです。
嘔吐症状が見られる際は、上記の応急対処をしながらなるべく早期に診察にいらしてください。
※下痢:便の様子は写真を撮って医師に見せてください。
5歳くらいまでの乳幼児期のお子さまの脳神経系は熱に弱く、高熱時に比較的けいれん発作を起こしやすいことがあります(有病率は7〜8%)。
症状 | 白目をむいたり目線が合わない・全身が突っ張り硬くなる ガクンガクンと手足を震わせたりする・呼びかけても応答はない 心配で慌てて抱き上げたくなりますが、刺激するとけいれんが長引いて危険なこともあるので、正しい対応が必要です。深呼吸をして落ち着いて対応しましょう。 |
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症状 |
38℃以上の突然の高熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛、咳、鼻汁、咽頭痛などで、およそ1週間で軽快します。 |
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迅速検査 | 発熱の初期には陽性となりにくく、検査が不確かになる恐れ。 ⇨陽性の人を陰性と判断して治療が遅れる、学校活動に早く復帰して感染を拡大。 極端に早期の検査はお子さまへの無駄な体への負担、社会資源の問題もあり推奨✖︎ 38℃以上程度の高熱が12〜24時間経過したタイミングでの検査が最も望ましい。 |
主な合併症 | 気管支炎、肺炎、気管支喘息発作、脳症など。 |
インフルエンザ脳症 | 発症から48時間以内はful脳炎脳症のリスクがあり、投薬の有無に関わらず、異常行動が発症する可能性があります。 保護者の方が発症から48時間は目を離さないようにして、階段の近く、大きな窓の近くに一人で寝かせない、窓やドアに施錠する、などけいれんや飛び出しの異常行動に備えた注意をしておいてください。 |
出席停止期間 | 発症日を0日目として、発症後5日を経過し、さらになおかつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまでは登校(園)停止とされています。 治癒証明書の発行が必要な場合は、解除予定日又はその前日にいらしていただけると作成可能です。園や学校から指定の書類を忘れずにお持ちください。 隔離解除後も咳嗽が長引きやすく、投薬の調整が必要になることも多いので、お困りの症状が続く際はご相談ください。 |
その他、詳細は厚生省インフルエンザQ&Aもご参照ください。
インフルエンザQ&A|厚生労働省(mhlw.go.jp)
主に「のど」の風邪ですが、リウマチ熱など全身の血管炎を来すこともある感染症です。のどの迅速抗原キット検査でも診断することができ、標準的には抗生剤を1日3回10日分内服し除菌します。
治療によって2〜3日程度でのどの痛みや発熱、発疹などの症状は治ります。
症状 |
発熱(38~39℃、微熱のことも)・強い「のど」の痛み・体や手足に小さくて紅い中毒疹・舌にイチゴのようなツブツブ(イチゴ舌)・頭痛・首すじのリンパ節の腫れ・腹痛や嘔吐など。 |
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出席停止 | 抗生剤を3回分=1日分が飲み切られていて、解熱した状態で元気があれば登校可。ただし、まだ倦怠感が残るなど調子が悪いうちに早期に復学すると熱が再燃したり、回復が遅れやすいので、しっかり体も休養が取れて元気になってからの登園登校再開が望ましいでしょう。 |
以上のような経過の時は早期に再診ください。
胃腸炎のほとんどはウイルス感染(ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど)で、一部に食中毒など細菌性(カンピロバクター、サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌など)が見られます。
手指についたウイルスが口に触れたりすることで感染し、冬場に幼稚園や小学校などで集団発生することも少なくありません。ウイルス性胃腸炎は細菌性に比べて比較的軽症で経過しますが脱水は入院適応の最多の原因となるため、治療の主軸はご自宅での脱水予防になります(嘔吐・下痢の章を参照ください)。
小さなお子さまの耳管(耳と鼻をつなぐ管)は、まだ角度がそれほどないため、鼻水が垂れ込みやすく中耳炎になりやすい構造になっています。
ひどい鼻水が続いた後などに、熱が下がらずに機嫌が悪く、耳によく触るなどの様子がみられたら、中耳炎を起こしているのかもしれません。
軽症の場合は、鼻水を抑えるお薬などを使用し、自宅でのこまめな鼻吸引などで対応しても十分治ることが多く、また低月齢の乳児だとそれほど炎症を起こすスペースも少ないので、熱もなく耳を触るだけでは心配しすぎる必要はありません。
心配のあまり耳掃除を頻回にやりすぎたり、鼓膜観察の診察をしすぎたりしてもかえって余計な細菌を入れてしまって感染を惹起することもあるので要注意です。
急性中耳炎の際に症状によって抗生剤を投薬して観察する際は、元気になってからも油断せず、抗生剤の内服が終了するところで再診を必ずして鼓膜の回復状況を確認にいらしてください。治療不十分な状況では抗生剤を変更や延長することもあります。
予防 | 鼻吸引や鼻洗浄。鼻水が多い場合、耳に負担をかけないように、家庭用の鼻吸い器などで、一度に強い・長い圧をかけず、こまめに何度か吸ってあげると効果的です。手術を要するほど難治性の中耳炎の中には先天性の免疫不全症と関わるものもあるため、なるべく同じかかりつけ医療機関で治療を継続する方が、早期の発見につながりやすくなります。 |
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〜無治療の場合には3〜4人に1人の割合で冠動脈病変を合併〜
5項目以上陽性であれば確定診断となり、治療を開始します。
無治療の場合 | 約25〜30%の割合で心臓の冠動脈に拡大性病変を合併し ⇨20歳代壮年期に心筋梗塞発症突然死の危険因子となる。 |
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治療の最大の目的 | 急性期に適切な治療で強い炎症反応を速やかに終息させ、血管病変の出現を抑制すること。治療法の研究は日々磨かれてきています。 |
最新のガイドラインでは症状が5項目揃わなくても、疑い例の段階から積極的に治療をなるべく早期に始めて冠動脈疾患を減らす方針がとられています。
高熱が続き、体のあちこちが腫れたり、赤くなったりする際は、経過を丁寧に診ることが早期診断・早期治療に非常に有用です。
小さなお子さまは頭の重心が重く、歩行も未熟なため、転倒による頭部外傷は、日常生活の中で遭遇が多いといえます。
*便秘の原因を生活習慣の中で丁寧に考えていくことが重要です。
大人同様に、栄養・睡眠・運動の3本柱をきちんと整えることが、解決の一歩です。
便秘は個々の日常・病状に合わせて治療を選択し、しっかりと気長に継続していくことが肝要といえます。
たわんでしまった直腸から、いったん投薬の力も借りて便を空っぽにして、1〜2日に1度の排便が自力で出せることを目指し、一緒に生活習慣を整えていくようにしていきましょう。経過が長いほど治療期間を要します。
なるべく、気がついたら早いうちにご相談ください。
腸重積(ちょうじゅうせき)は、赤ちゃんや幼児に見られやすい急性腹症です。
腸の一部が他方の腸内にめり込んで消化管の通過障害がおこります。腸の血液供給が途絶え、24時間以内に整復されなければ、腸壁の組織が壊死する危険があります。
症状 | 突然の激しい腹痛(間欠的に啼泣)、嘔吐、血便の3徴 七転八倒するような痛みと言われるくらい見たことない大泣きをしたかと思えば、ケロッとした顔で遊んでいる、など発作的に大泣きする間欠的啼泣が腹痛の初期症状のこともあり、お母さまの「何となくいつもと泣き方が違う」という勘が当たることもあります。イチゴジャムの様な赤黒い粘血便が見られたら早急に整復のできる施設で治療を開始しなければなりません。 |
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治療 |
比較的全身状態もよく、発症から24時間以内⇨空気や造影剤、生理食塩水を用いて放射線透視下または、超音波下などで整復の方針。 |
うまれつき精巣が陰嚢内に固定がなく、鼠径部という太ももの付け根や腹腔内にある。
生下時4〜5%⇨1歳児約1%(低出生体重児ではより多い)と有病率が下がる。
…診察で手で引き下ろすと陰嚢内に入る移動性精巣などは、自然に降りてくることが多い。
1歳まで自然下降の無いものは⇨不妊・精巣捻転・精巣腫瘍のリスク↑
⇨手術などの治療要。こまめな健診で経過を見守る必要があります。
気になる際は2週間健診など、なるべく早期からご相談ください。
適切な治療タイミングを検討しご提案いたします。
当院では、食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、通年性アレルギー性鼻炎、花粉症などアレルギー性疾患全般にわたって対応しています。
アレルギーとは、本来なら体を守るはずの免疫反応が、食物や花粉など体に害を与えないとされるものにまで過剰に反応してしまい、自身の身体を傷つけてしまう反応に変わってしまうことです。
問診の結果、アレルギーの症状が疑われる場合は、必要に応じて原因を特定する検査を行ったり、学校指導表の作成をしたりして原因除去の方針を立てます。食物アレルギーの食事指導、アトピー性皮膚炎のスキンケアの方法と軟膏の塗り方、喘息治療薬の正しい管理指導を行います。詳細は各対応疾患の項目をご参照ください。
学校生活管理指導表は、アレルギー疾患のあるお子さまが安心して通学・通園できるように症状や生活上の留意点などについて医師が記載し、学校や幼稚園・保育園へ提出するものです。病状変化を確認するため原則毎年提出が必要です。 ※前年の指導表の写しを一緒にご持参ください。
症状 | 皮膚やのどの痒み・蕁麻疹・激しい咳・ゼーゼーとした呼吸困難感・激しい嘔吐・下痢など。 |
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重症例⇨アナフィラキシーショック | 血圧の低下・意識障害・呼吸循環障害など 命に関わる重篤な症状が急激に出現する危険な状態も。 |
乳児消化管アレルギー | 湿疹は目立たず、頻回な嘔吐や下痢が主体のもの |
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口腔アレルギー症候群 | 年長になるにつれ様々な果実・野菜等に主に反応しやすくなり、口腔内違和感(喉のイガイガ、口の掻痒感、浮腫)を主体とし、花粉症との関連も。 |
〜本来は体に害はない食べ物にアレルギー反応を示してしまう原因に関して、詳細は不明ですが小児期に皮膚で湿疹など炎症やダメージがあると、家の中で食べ物のかけらに出会った際にそれを悪いものと勘違いしてしまい、その後その食べ物を食事として口から摂取した時に異物と判断して免疫反応が過敏に働いてしまうというメカニズムが考えられています。
つまり、日頃から皮膚をきれいに保つことが食物アレルギーの予防、治療に大切なのです。〜
1
問診(発症時期、症状の時間経過、重症度の評価、対処、家族歴、これまでの接触歴など)。
2
必要に応じ血液検査を実施。入院での負荷試験など、状況に応じて専門施設へご紹介。
3
重い喘息やアトピー性皮膚炎などがあると、先にそちらの治療が落ちついてからでないと食物アレルギーの治療を進められないことがあります。
4
学校指導管理書の作成など、自宅や学校での除去方針の相談・決定。
5
自宅での負荷を中心に食物負荷試験など負荷方針を相談・決定。
6
外来での経過相談の継続。
7
アナフィラキシーの既往がある方にはアドレナリン自己注射液を速やかに使用することが重要で、資格のある医師の指導の下に指導、処方が必要になります。 ※当院で処方可能です。
かゆみの強い湿疹。良くなったり悪くなったりを慢性的に繰り返す、皮膚のアレルギー性の炎症疾患です。乳児湿疹から移行する場合も。
症状 | 顔や頭がカサカサして赤くじくじくした湿疹に。びらんやかさぶたも。 目や耳の周り、首、ひざやひじの関節内側など特徴的な部位に乾燥の強い皮疹。 適切な治療が行われないと繰り返す炎症の結果、黒ずんだ色素沈着をきたす。 |
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悪化因子 | 食べ物、ダニやハウスダスト、花粉などの環境要因や、汗、空気の乾燥など。 |
1
「よく落としてよく保湿する」をキーワードに。洗浄の工夫や衣服の調整など環境整備を相談。
2
ステロイド外用を中心に塗り方の工夫も含めた投薬管理を行っていきます。
3
命に関わるような重症アトピーは速やかに高次専門医療施設へのご紹介も
ぜひお気軽にご相談にいらしてください。
空気の通り道である気道がアレルギー性の炎症を慢性的に起こしていることで、常に気道がただれて過敏になり、発作を引き起こしやすい状態になる疾患。
悪化因子 | 感染、花粉・ダニ・ハウスダスト・ほこり・喫煙・ペット・線香などの煙・気候変化、ストレス。 |
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症状・機序 |
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治療 | ガイドラインに従って、発作が起こりにくくなるようにアレルギー反応を抑える投薬など。 発作を繰り返し、瘢痕化した気道炎症には、ステロイド薬を用いたり、など段階に応じたSTEP管理で計画的に治療を進めていきます。 「発作がないから治療をやめる」ではなく、「発作がおこらない気道を再構築していく治療」です。最低3ヶ月〜数年継続が必要です。 |
もともとお子さまは気道の過敏性が高く、風邪をこじらせるとゼイゼイしやすく、喘息と同じような病態になることが多いです。「喘息がちだね」と言われたり、吸入など喘息同様の治療が行われますが、何度も発作を繰り返すうちに本格的な気管支喘息になる方もいます。発作程度を見極めて治療を進めていくため、なるべく統一した医療機関での通院・治療をお勧めいたします。
通年性アレルギー性鼻炎 | 一年を通して症状が出るタイプ |
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季節性アレルギー性鼻炎 | 特定の季節に症状が出るタイプ、いわゆる花粉症 |
近年、アレルギー性鼻炎をもつお子さまの増加と発症の低年齢化が報告されています。
主原因は、ダニ、ハウスダスト、ペット、花粉等(スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、ハンノキなど)。
当初はお子さまの鼻腔の状態や合併する症状を診ながら投薬治療をしていきます。
年単位の治療が継続された方で6歳以上の方では、症状や検査結果に応じて、舌下療法といった新しい減感作療法にSTEP UPを検討もできます。
※ただし、すべての患者様に同様の効果が期待できるわけではないことをご了承ください。
アレルギー性鼻炎は、鼻や目のつらい症状のみならず、口呼吸から風邪をひきやすい・頑固な症状から学習や睡眠に支障をきたす、など生活の質を落としてしまうことがあります。
お子さまに気になる症状がみられたら、お早めにご相談ください。